熟女のシュシュ、真っ赤なヒール、・・・のスナップ写真を撮って

2017/01/31
23:08

「シュシュつけたほうがいい？」
「あ、つけて」

帽子を脱いだ彼女は、丸い頭にシュシュをつけた。
実は、今日が一眼レフデビューなのを、彼女は知らない。

飲みにいくのを我慢して。
思い切って購入した一眼レフ。
ビックカメラで。

今日、この写真を撮るにあたって、一眼レフを投入したのは。
前回に彼女から聞いた話で、気負っている自分がいたからだった。

それは15年ほど前に。
銀座でカメラマンに声をかけられて、撮影した写真が。
三越の写真展に入賞したという件に対してだ。

自分はそんな、カメラの腕はよくないです、すみませんです、とは言ってある。
エロ写真なんです、とも笑ってごまかしてもある。
でも内心は僻んでいた。
そんなプロと比べられてもな、と。

彼女はシュシュとつけ終えた。
とりあえず、まずは脚からか。
エロパワーでいくしかない。

一眼レフを構えただけで、カメラマンっぽくなった。
インチキカメラマンから、プロ級のカメラマンになった気分。
今のところ、全く使いこなせてもないのだが。

コンパクトデジカメと違うのが、シャッター音。
一眼レフのほうが、圧倒的な機械音が響く。
振動あるシャッター音が気持ちいい。

撮影の設定はすべてオート。
連写モードにしてある。

カシャカシャと撮りながら。
気になる、写真展に入賞した件に触れてみた。
すると彼女は言う。

「ううん、その人だってアマチュアよ」
「えっ、そうなの？」
「そうよ。普段は会社員よ、その人。坂本さんと同じよ」
「そうだったの？」
「うん。そうそう、そのときね、賞金も出たの。そしたら全部あげるっていうの」

「僕はアマチュアですのでって。でも、わたしも、いいっていったのよ」
「うん」
「フィルム代だってかかってるでしょって。それで賞金は、半分こにしたの」
「そうだったんだ」
「あっ、あとで見せてあげる。そのときの写真、うん」
「あ、見たい」
「フフッ」

自分が勝手に、プロカメラマンだと勘違いしていたようだ。
三越写真展入賞、恐るるに足らず。
というわけで、とたんにヤル気が出てきた。

「えっ、なにこれ」
「これをね目隠し代わりに使うの」
「えっ」
「これさ、同好会の名前なんだけど」
「ええっ」
「これを顔に当てるの、こうやって」
「ええ」
「やっぱさ、写真にモザイク入れるのがイヤなんだよね」

バックからラミネートを取り出した。
彼女に手渡そうとして差し出した。

「えええ、すごいやだ」
「なんで？顔隠しに使えるでしょ？」

予想外の抵抗。
人妻鑑賞同好会、解散か？

彼女の中で、何かが違うらしい。
でも、こんなリアクションが欲しかった。

「やだあっ、なんかこれ、中国人のグループみたい」
「いいじゃん、これ、目線みたいにさ、ちょっと当ててみて。似合うよ、たぶん」
「もうちょっと、センスないの？」
「あのね、わざと昭和っぽくしてるの。それがいいんだよ」
「それにしても・・・」
「会員さんがね、おじさんだけだからさ、けっこう好評なんだよ」

多数の幽霊会員、突如出現。
責任転嫁で悪あがきの得意技も仕掛けた。

「手で隠せばいいでしょ」
「じゃ、それで撮ってみよう」

この、人妻鑑賞同好会のラミネートには意味がある。
まずは、写真にモザイクは合わない気がする。
モザイクは入れない写真をUPしたい。

二つ目のラミネートの意味として。
この人妻鑑賞同好会は、『熟女を脱がすブログ』の隠れ蓑となっている。

どういうことかというと。
ナンパした熟女には、このブログの存在は隠している。

理由は。
好きに性癖をさらけ出して、好きに日記を書きたいから。
相手に気兼ねしていたら、思い切り書けなくなる。
ブログ教えないというのは生命線だ。

それにも関わらず、写真を撮っているうちに。
相手が『写真が見たい』と、言い出したりする。
うっかりと『ブログに・・・』と口にしてしまい、『見たい！』と言われることもあった。

それに対し、このラミネートで先手を打っておく。
熟女、ブログ、ナンパ、脱がす、・・・というワードは言わないようにして。
代わりに、人妻、鑑賞、ホームページというワードを使っている。
検索されてもヒットしないようにだ。

そして。
彼女の希望通りに、そのまま手で顔を隠す写真を何枚か。
でも、しっくりこない。

どこがどうという訳ではないが。
犯罪者にも見えてしまう。

正面を向かせてみた。
これもなんかちがう。
手隠しは却下か。

いや、恐らく。
背徳感を抱いている人妻だったら。
この手隠しの写真も、違った感じになるのかもしれない。
背徳感は抱いてない彼女だから、しっくりこないのかも。

「こんなのイヤァ」
「もうちょっと顔を上げて」
「もう、イヤァ」
「もっと上げて」
「イヤァ」

彼女にラミネートを持たせることはできた。
渋々と顔に当てて目隠しもした。

そして、妙なところで、はにかんだ仕草。
少しだけ、恥ずかしがる表情。

アングルを替えて、森タワーを背景に撮り。
なにかしっくりこない。

人妻とオフィスビルは合わないのか？
人妻鑑賞同好会が異質なのか？

それに逆光か？
ここはストロボなのか？
こういうときは、レフ版を当てればいいのか？

ビックカメラの店員さんの技術指導を受けなければだ。

テレビ朝日を背景にして撮った。
が、これもなにか違う。

曇り空には、ISOの設定を変えるとマニュアルにはあった。
なんのことだか、さっぱりわからない。

これは絞りか？
絞りを変えると、背景がぼやけるとか、手前の人物がくっきりするとか。
確かマニュアルにあった。

カメラの機種と撮影方法は、独自に変えてみることにする。

ナンパしたときは、コンパクトデジカメでスナップ写真を。
話しながら、歩きながら、上下に左右に動かしながら、連写する。
気軽に撮るほうが、お願いも、ご機嫌とりもしやすい。

今回みたいに2回目のときは。
一眼レフでじっくりと撮ろう。
安心感と緊張感を使い分けるためにも。

緊張という圧をかけて、軽い上下関係で接近する。
一眼レフの振動があるシャッター音には、その勢いがある。

そして何枚か撮っていると。
あれだけラミネートを嫌がっていたのに、次第に慣れてきた様子の彼女。

赤い口紅で、笑みを浮かべはじめた。
恐ろしい適応力。

こんなときは、もっとタッチをしてもいいのかも。
髪が跳ねてるとか。
服のシワを伸ばそうとか。

あとそうだ、もう一点だけ。
人妻鑑賞同好会のラミネートの意味はあった。
それは、独身中年男の鑑賞物だと分からせるためだ。

どういうことかというと。
今まで、親しくなってから、エロい視線をぶつけて。
エロ写真や動画を撮ろうとすると、嫌がる女性が度々いた。
男の剥き出しの性欲の対象とされるのは、生理的にイヤなのだと思われる。

とくに自分の場合。
ちょっと気を緩ませると、いい人と言われてしまう。
カンニング竹山みたいな風体なのに。

しかし、仕事と女性に関して、いい人と言われるのは得策ではない。
いい人なんて、せいぜい近所周りで言われれば十分だ。

ああ。
すっきりした。